ある女の物語 (I)
若って素晴らしいことですね。
夢と希望にあふれて、恐れを知らず、恋に憧れ、恋に破れ、そして再び恋に生き、泣いたり笑ったりして毎日を過ごし…
ここに綴られたのはそんな日々を送ったある若い女の物語。
十九歳のある日、カトリックの教会に通い始めた彼女は、愛することを許されぬ僧服の人に恋をしまし1.
1.黒い衣 (Black Robe)
黒い衣に包まれて 貴方は一人祈る
その姿を見つめる私は 教会の片隅
実る事の無いこの恋が 私の心を引き裂く
貴方に知ってほしかった 私の切ない思い
でもそれは禁じられた恋 許されぬ恋
私は貴方を愛してるけれど 貴方は私を愛せない
教会の鐘が鳴る夕べ 貴方は別れを告げた
私の愛を知らぬまま 貴方は闇に消えた
私の愛は貴方に捧げた でも貴方の愛は十字架に
実らぬ恋に長い間苦しみ、二度と恋などするものかと心の中に決めた彼女に、新しい恋人が…
2.もう一度愛したい (Let Me Love Again)
恋に破れた苦しみに 耐え切れずに泣いた私
でも今日から悲しみとも 涙ともお別れ
だあって私の魂を 悪魔に売り渡した
だあって私の魂を 悪魔に売り渡した
もう誰も愛さない もう誰も愛せない
もう誰も愛さない もう誰にも愛されない
でも貴方に逢ったその日から 私は貴方の虜なの
悪魔との約束も忘れて ただ貴方に愛されたい
お願い私の魂を 返して欲しい
お願い私の魂を 返して欲しい
もう一度愛したい 貴方を愛したい
もう一度愛されたい 貴方に愛されたい
それから数か月後、帰国してから結婚すると彼に口約束をした彼女は、シベリヤ経由で長期ヨーロッパ旅行に出かけました。横浜からナホトカまで船、ハバロフスクまで汽車で、そこから小型の飛行機で八月の末にモスクワに着きました。
3.モスクワ (Moscow)
貴方にサヨナラ言ってから まだそんなに経っていないわ
赤い広場の前で 貴方がここに居たら
何と言うかしらと思う
未だ日本は夏だけど ここはもう冬みたい
冷たい雨に濡れると 私の心も凍る
モスクワの街は 何故か淋しい
希望を失い 明日も無いかの様に
人々は街を さ迷う
今クレムリンの兵隊が 時計の音に合わせ代わる
この街もそんなに 冷たい街かしら
スウェーデン、そしてノールウェーを訪れ、そこで三人のドイツ人学生に逢い、フォルクスワーゲンで共に旅をしました。そんなある日、四人はデンマークの野原でピクニックをしました。その時に彼女は、こんな夢を見たのです。
4.夢 (Dream)
夢を見たの 忘れられない
真っ赤な空に 白い花束
暗い影から まだ見ぬ誰かが
黒い手を差し伸べ 私を抱く
見知らぬ街を 一人さ迷う
通り過ぎた道は 暗い闇に消える
夢から覚めて 見上げる空に
私を燃やす 太陽が光る
ドイツを楽しんだ後、学生達と別れた彼女は、フランスを回り、次にスペインに向かいました。雲一つない真っ青な空、苦しく感じる程照り続ける太陽。夕焼けが街を一色に染めたグラナダでのある日、数々の洞窟が並ぶサクラモントでフラメンコを見ました。
5.ここはグラナダ (Granada)
白く塗られた 洞窟の壁に
真鍮が夕暮れに 光る光る
女の心が とりつかれた様に
リズムに酔い 流れるスカートの裾
黒い影を残して踊る ここはグラナダ
心打つギターの音と 歌声に合わせて
カスタネットの響く音が 心に残る
見つめる瞳が 忘れられない
リズムに酔い 揺れる長い黒髪
軽やかに踊るフラメンコ ここはグラナダ
数日間のセビリア滞在の後、マドリード行きの夜汽車の中で、背の高いジーンズがよく似合う、青い目のカナダ青年に逢いました。初めて逢ったその瞬間から二人は恋に落ち…
6.You and I
You and I Two strangers off to see the world
You and I Fate brought us together
I never thought I’d come this far
To fall in lover with you
You are here just like my dreams,
Holding me (here) in your arms
You and I
You and I Worlds apart till now
You and I Love brought us together
I never thought you’d come this far
To fall in love with me
You came into my world, made my life complete
You and I
日本の恋人を忘れたわけではありません。彼女は異なる二つの愛の葛藤に胸を引き裂かれる思いをしました。
7.冷たい女 (Cold As Winter Wind)
一人旅に出る前に 二人交わした指輪
あの時は貴方に 嫁ぐつもりでいたの
ご免なさい貴方 仕方がなかったの
あの人に逢った時から 全てが変わった
If you were here, hiding your pain
I know you would whisper the words
Your soul is cold as winter wind
That swept away across the sea, leaving me here
貴方との愛は 偽りでは無かった
でも一人旅は とても寂しいもの
ご免なさい貴方 仕方が無かったの
あの人に逢った時から 寂しさを忘れた
冷たい女だと 貴方はつぶやいた
冷たい女だと私も思うわ 許してね貴方
マドリード、バレンシア、バルセロナを共に旅した彼女と彼は、愛を確かめあいながらも、恋の不現実性を感じ、何度か別れようとしました。でももしお互いを必要とするなら、数週間後にマルセーユで逢おうと約束し、別れました。二週間後、マルセーユに彼が来ている事を祈り、彼女はパリから夜汽車に乗りました。マルセーユの波の音、磯の香り、そして彼の笑顔に思いを馳せて…
8.マルセーユ (Marseille)
マルセーユ 長い汽車の旅
憧れのパリを去って 貴方に逢いに来た
マルセーユ 青い海が呼んでいる
貴方の瞳が 眩しく光る
マルセーユ 白い舟が浮かんでる
夜明けの朝の 太陽に輝いて
マルセーユ 汽車はまだ走るけど
私の心は 貴方のもと
燃える唇 たくましい腕
優しい微笑みに 囲まれたい
マルセーユ 貴方は私の夢
愛し合う二人は、オーストリア、スイスを旅行し、秋の半ばにローマを訪れました。
9.貴方と二人なら (Rome)
太陽が眩しく光るローマの街 二人で歩いたスペイン広場
色とりどりの花に囲まれた 白い階段を寄り添いながら
明日はどうなるか知らないけれど 今のこの一時 愛し合えるなら
それだけでいいの そうよ貴方と二人なら
夕日が街角の影を深めるローマ 二人は微笑む愛に満ちて
いつか結ばれることを祈って トレビの泉でコインを投げる
彼女はパリで彼と二人の生活を始めましたが、数か月後、北風が吹き始めたある日、彼はまたパリに戻ってくると約束し、故郷カナダに帰ってしまいました。
10.パリの冬 (Winter in Paris)
The sound of your footsteps on the leaves,
Echoed sadly in my heart.
Cause tomorrow, you’ll be gone,
Leaving me in Paris alone with memories.
The falling leaves kissed your cheek,
As they danced in the autumn air,
Where we walked hand in hand, talking away endlessly.
How quickly time went away,
Since I saw you for the first time.
We’ve been together since that moment,
With love in our hearts.
Winter is here in the city of Paris,
Just as my love left me here alone
Holding me in your arms, you said “I love you”
Promising me that we’ll meet again
I stood alone until your footsteps
Disappeared in the evening air.
The falling leaves kissed my cheek
As they danced in the autumn air
As if they knew the sorrow in my heart
Comforting me gently.
The kiss we had yesterday,
Could be the last time for you and I
Cause you left Paris leaving me alone with memories.
彼を待ちながら三か月フランスに留まった彼女は、ある朝シャモニでカナダからの手紙を受け取りました。その手紙には“カナダで逢いたい…”と書いてありました。
11。再開… カナダ (We Will Be Together: Canada)
ナイアガラの滝で 逢おうと言った
しぶきに濡れながら 貴方を待った
愛があるなら きっと逢える
その言葉を信じて 貴方に逢いに来た私
バンフの街の 風は冷たい
震える私を 抱きしめる貴方
そんな貴方が とても好きなの
だからここまで 来たのよ
貴方の愛する国へ
ロブソン通りで 肩を寄せ合う
貴方の愛が 私を酔わす
私の旅は ここでお終い
遠い国から 海を越え
貴方のもとへ 来た私
貴方の愛する国 カナダ、カナダ
5.